2005年10月23日 (日) 03:43 | 編集
http://bubble4.2ch.net/test/read.cgi/band/1128229710/
最近、とても感動した話があるの。
その日も、いつも通りに
電車ん中で京ぽん使ってバンド板を見てたんだけど。
一番上に、「エレキギター選び」ってスレがあって。
確かその時は130レスくらいついてて、
あー。また釣りスレか。たたかれあらされまくってるんだろうなぁ・・とか思いつつ見てみると、なんか
「>>13感動したぜ!」とか「>>13泣いた(;;」
とか書かれてて。何かと思ってみてみたら
なんか、13氏の語り みたいなのが乗ってたの。
最初、まったりレスでスレが始まってて、
そこで13氏が
13 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/03(月) 16:59:15 ID:i7zqReiR
いいか?
楽器選びなんて言ってる時点でダメだ。
俺は楽器選んだりしてないぞ。
ギターが俺を選んだんだよ、それがロックだろ。
要するにフィーリングだ。
ピンと来るギターがあれば予算オーバーだろうがなんだろうが
親を質に入れてでも買え、闇金融で借金してでも買え。
それがロック。
どれを買っていいかわからないというのは
残念ながら君はギターに選ばれなかったと言うことだ。
って書き込みをして。
その直後、語りが始まったのですよ。
ちょっと以下に、要点だけ掲載してみるから、まぁ読んでみ?
-------------------------------------------------------
13 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/03(月) 16:59:15 ID:i7zqReiR
いいか?
楽器選びなんて言ってる時点でダメだ。
俺は楽器選んだりしてないぞ。
ギターが俺を選んだんだよ、それがロックだろ。
要するにフィーリングだ。
ピンと来るギターがあれば予算オーバーだろうがなんだろうが
親を質に入れてでも買え、闇金融で借金してでも買え。
それがロック。
どれを買っていいかわからないというのは
残念ながら君はギターに選ばれなかったと言うことだ。
17 :13:2005/10/03(月) 17:33:47 ID:i7zqReiR
よし、じゃあ俺が初めてギターを買ったときの話をしてやろう。
あれは中2の時だ、女にモテたい一心でギターに手を出すことにした。
最初は>>1みたいな状態だったよ。
どれもこれもピンと来なくてな、
動機が不純なだけにギター買うのやめようかと思ったよ。
そんな時出会ったのさ、
フェンダーストラトキャスター。
中古でな、お世辞にも綺麗なギターじゃなかった。
でも同じようなストラトなら幾つも見て来たはずなのに
そいつが俺を選んだんだよ。ピンときたね。上手く表現できないが、ピンときたのさ。
18 :13:2005/10/03(月) 17:40:57 ID:i7zqReiR
買おうとしたけど中学生に買える値段じゃなかった。
でも俺は諦めなかったね。
まず店員のオッサンに土下座。さらに一時間説得して
小遣い+今年のお年玉+来年のお年玉
全額渡す約束して、やっと売ってもらったよ。
今でもそのギターは俺の原点だから大切にしてるよ。今じゃ他にも何本か持ってるけど
No.1はそいつしかいねえ。
例えるなら最高の女に出会ったようなもんなのさ。
19 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/03(月) 20:20:49 ID:E1gL/Gfi
>13
てめぇ・・・漢だよ
21 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/04(火) 19:33:43 ID:8v5eFISy
結局代金は完済したのかい?
24 :13:2005/10/06(木) 12:29:07 ID:5+syNZjZ
>>21
よし、じゃあその時の話をしてやろう。
それからというもの、俺は毎月欠かさず小遣い持って楽器屋に行ったよ。
行く度に入り浸っては楽器屋のオヤジとロック話に花を咲かせたもんさ。
ギター一本限りでアンプすら持ってなかった俺にとっては最高の練習の場でもあったんだ。
それはその年の正月が明けて少し経った頃だ。
約束通り俺は貰ったお年玉を握りしめ楽器屋に走った。
一円足りとも遣わずに。
息を切らしながらお年玉の入った封筒を差し出した俺にオヤジはこう言ったよ。
25 :13:2005/10/06(木) 12:39:56 ID:5+syNZjZ
「金はもういらん」と。
「ギターは今までもってきた金で売ってやる。そのかわりにその金でアンプとエフェクターでも買っていけ」とな。
俺は一旦は遠慮して断ったさ。
だがオヤジの強い勧めで、充分にお礼を言った後甘えさせてもらった。
最高に嬉しかったぜ。
憧れだったオーバードライブのエフェクターを手に取った俺にオヤジはこう言った。
「バカ野郎、歪みなんてものはアンプで作るモンだ。最初からそんなモン買うんじゃねえ」
目からウロコだったね。
26 :13:2005/10/06(木) 12:52:11 ID:5+syNZjZ
あれこれとオヤジのアドバイスを受けながら、
結局選んだのはディレイとワウペダルに小さめのアンプ。
この三つだった。
アンプはともかくディレイとワウは今でも使ってる俺のフェイバリットだな。
今俺が使ってるギターでも最高のエフェクトをくれるニクイ奴らさ。
あれから十年以上経つが、今でもオヤジの言うとおり
アンプで歪ませるのが俺のスタイル。これからも変わらないよ。
残念ながらその時がオヤジに会った最後の時だったよ。
オヤジ…元気でやってるか?
俺は今でも「ロックしてる」ぜ。あんたが教えてくれた
ロック魂と共にな。
27 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/06(木) 12:57:57 ID:Sf9dEd6c
アンプで歪ますって事はもちろんセンドリターンは付いてたんですよね?
30 :13:2005/10/06(木) 19:37:01 ID:5+syNZjZ
>>27
よし、じゃあその時の話をしてやろう。
その時買ったアンプはな、ボリューム、ゲイン、トーンの三つしか付いてないようなヤツだったんだよ。
オヤジはもっといいアンプを勧めてたけど、
俺は今回は後払いにはしたくなくて、予算内に納めようとしてそうなった。
あれは今思えば「虫の報せ」ってヤツだったのかもな。
そんなアンプだったもんだからな、
充分な歪みなど得られなかったよ。
付いたアダ名は
「ベンチャーズ」さ。
可笑しいだろ?笑えよ。
33 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/06(木) 22:46:25 ID:MuPFeYhN
>>30
その後、歪みを得ることはできたのか?
36 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/11(火) 16:35:17 ID:Czv2eK7X
>>13
そのオヤジはどうなった?
続きキボーン
39 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/13(木) 18:21:25 ID:hy6StVaH
>>33
あぁ、かなり後になってからの話だが、
初めてドでかいマーシャルにギターを繋いだ時の
あの感動は忘れられねぇな。
「オヤジの言ってたのはコレかぁっ!」て感じだな。
40 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/13(木) 19:10:06 ID:hy6StVaH
>>36
よし、じゃあそのときの話をしてやろう。
あれはエフェクターを売ってもらってから
一週間程経った時のことだった。
俺の住む街に、その年初めての雪が降った…
とても寒い日だったよ。
俺はその日、やっとの思いでマスターした
覚えたてのフレーズを早くオヤジに聴かせたくて
楽器屋へと走っていた。
ワウとディレイを駆使した
ファンキーなフレーズだったのを覚えている。
楽器屋に着いた俺が目にしたのは、
数々のギターたちがスポットライトを浴びていたショーウインドーは電気が消され、
入口にはシャッターが下ろされていた
42 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/13(木) 22:48:48 ID:hy6StVaH
こう言っちゃあなんだが、
オヤジの店には営業時間てもんがなかった。
夜は大体遅くまでやってたけど、
店が開くのは昼過ぎからが多かった。
夕方から開く時もあったし、暗くなってからの時もあったんだ。
今日はもう開かないのかな?なんて思ったりもしたけど、
それは有り得なかった。
その日は約束があったんだ。
だから俺は
「どっかで酒でも呑んでるんだろう」
なんて考えていた。
俺は雪除けに店の前のアーケードの下に座り、
店が開くのを待っていた。
雪は段々と積もりはじめ、街灯には灯がともりはじめた…。
46 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 12:37:55 ID:JF2Vd8YE
翌日、俺は高熱で寝込んじまった。
とうとう店が開けられることはなく、オヤジが現れることもなかった。
高熱にうなされながら俺は夢を見たんだ…
今も忘れない鮮明な夢を。
俺は真っ赤なオープンカーの助手席に乗り、だだっ広い荒野を走っていた。
運転席ではジミーペイジがハンドルを握っている。
俺は有名なツェッペリンのあのナンバーのアルペジオ部分を奏でていた。
ふいに車の横にハーレーに跨がったオヤジが現れた。
「聴いてくれよ!あのフレーズが弾けるようになったんだ」
でもオヤジは申し訳なさそうな、そして少し寂しそうな目をしたあとに…
47 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 12:43:44 ID:JF2Vd8YE
ニカッと笑って俺にこう言ったよ。
「ロックでいろよ」
「達者でいろよ」とでも言いたかったんだろうか、
オヤジはハーレーのアクセルを開け、走り去ろうとした。
俺はジミーにスピードを上げるように言ったけど
ジミーは首を横に振るだけだった。
オヤジの姿が地平線の向こうに消えたところで…
俺は目を覚ました。
55 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 18:09:16 ID:JF2Vd8YE
俺の熱が下がったのはそれから二日後のことだった。
あれから楽器屋のシャッターが開けられた様子は無い。
電話をかけてみたが、あの無機質な女の声が俺を苛立たせるだけだった。
それは二日ぶりに学校へ行った時だった。
給食を食いながら
「オヤジは一体…」
そんなことばかりを考えていた俺を呼ぶ声がした。
呼んでいたのはクラスの女の子だ。
他のクラスの男子が俺に会いに来てる…と。
それは後に俺の生涯の友となるハルヨシとの、
運命の出会いだった。
56 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 18:24:34 ID:JF2Vd8YE
ハルヨシは控えめな男だった。
決して真面目な優等生ってわけじゃないが、
なんていうか…クール、そうクールでニヒルな奴だった。
俺は文化祭なんかじゃ喜んで前に出ていくタイプでな、
早い話が「お調子者」さ。
そんな俺とハルヨシだから勿論話したことなんか無かったし、
名前も顔もうろ覚えな間柄。昼休みにクラスに訪ねてくるような仲じゃなかった。
オヤジのことで頭がいっぱいだったから、正直「面倒臭え」と思ったよ。
怪訝な顔の俺に会うなりハルヨシはこう言った。
59 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 19:25:21 ID:JF2Vd8YE
「楽器屋…」
訳がわからずハァ?という顔をしている俺にハルヨシは続けた。
「よく行ってたよな?」
俺は驚いたよ。その時の俺には一緒に音楽やる仲間はいなかった。
友達がいなかった訳じゃないがな。
だから楽器屋に行くときはいつも一人だった。知ってる奴がいるはずなかった。
ハルヨシの話によると…
オヤジの店は随分前から経営が苦しく、借金でどうにもこうにもならなくなった…と。
あの店もとうとう他人の物になっちまったらしい。
60 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 19:56:05 ID:JF2Vd8YE
雪が降った日の前日、ギターの弦を買いに行ったハルヨシはその話を聞き、
俺にそのことを伝えるよう頼まれた。
その日のうちにオヤジは夜逃げ同然にこの街を出たそうだ。
61 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 20:26:04 ID:JF2Vd8YE
俺はシャッターの下ろされた楽器屋の前にいた。
ハルヨシの伝言通り、店の郵便受けには一枚のCDが入っていた。
ストーンズのスティッキーフィンガーズ。
俺はあの日、このCDをオヤジに借りる約束だったんだ。
CDケースの中には数枚のピック、それとメモ用紙が一枚挟まれていた。
そこには
「すまん」
…と。
理由はなかった…
言い訳もなかった…
ただ一言だけ、
「すまん」
と書かれていたよ。
64 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 21:00:02 ID:JF2Vd8YE
人が人生の中でその両手に留めておける物っていうのは、実はそんなに多くない。
なにかを失えば、なにかを得られる。
そして得てはまた、指の隙間からこぼれ落ちるように失う物がある。
運命ってヤツがあるとして、神様ってヤツがいるとすれば、
実に上手く作られたもんだ俺達は。
オヤジは俺の前から姿を消し、ハルヨシが現れた。
俺とハルヨシがお互いの存在を得ることによって、
俺達はまた失うことになる。
ハルヨシは大切なものを…俺はストラトの音色を…
だがそれはまた別の話だ。
65 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 21:07:04 ID:JF2Vd8YE
それからオヤジがどうなったかはわからない。
奥さんと子供がいることは以前聞いたことがあるが、
幸せにやってるだろうか。
今でも不意に現れては
「バカ野郎、ロックてのはなぁ…云々」
なんて言い出すんじゃないか?
俺はその日を待ってるぜ。
あの日聴かせるはずだった、あのファンキーなフレーズを胸に…
いつまでもな。
おっと…長くなっちまったな。
----この後、「感動した」「続きを聞かせて!」等のレスが続き、ふたたび13氏降臨----
84 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 16:53:38 ID:IlqGnrkB
よし、じゃぁその後の話をさせてもらおう。
少し…長くなるがな。
それにはまず、ハルヨシのことについて少し話さなければならないな。
オヤジが俺達の街から姿を消して以来、俺とハルヨシは急に仲良くなった。
オヤジの件が無ければ、おそらく一生接点の無かったであろう俺達だが
ギターを通じて無二の親友となるのにそれほど時間はかからなかったのさ。
ハルヨシは天才だった。
軽々しく使う言葉じゃないのはわかってるが、それ以外にヤツのギターを
表現する言葉が見つからなかった。
その当時、はっきり言って俺は初心者のレベルを脱していない程度だったが、
ハルヨシは違った。
俺達が出会った中2の時点で既にプロの域に達していたよ。大袈裟じゃなくな。
あれから十数年の時が流れたが、俺は未だにあの頃のハルヨシのギターを
越えたと思えない。
アイツはきっとロックの神様に愛されてたんだ。
ハルヨシはきっと将来世界を舞台に活躍するギタリストになる…
そう信じて疑わなかった。
俺のギターの何が気に入ったのかわからないが、
「一緒に演ろうぜ」
ハルヨシはそう言ってくれたのさ。
そして2年の歳月が流れた。
俺達は高1になっていた。忘れもしない高1の冬だった。
85 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 17:18:39 ID:IlqGnrkB
高校に上がると同時に音楽仲間もできた。
俺とハルヨシは別々の高校になっちまったけど、それでも毎日のように顔を合わせてたな。
そのうちに俺の高校からドラマー、ハルヨシの高校からボーカルとベーシストが見つかり
それが最初から決められていたことであるかのように、
俺達は五人で一つのグルーヴを紡ぎだすことになる。
ベーシストの家に倉庫っていうか…ガレージがあってな。
そこが俺達の溜まり場になった。もちろん練習もその場所だ。
タバコの煙で、まるで霧がかかったようなガレージの中…
夜中まで止むことの無いR&Rとバカ話。
最高だったぜ…あの頃の俺達は。
ハルヨシという最高のギタリストが身近にいたこともあって、
俺達メンバー全員の上達も早かったぜ。自分で言うのもなんだがな。
気付けば俺達は地元じゃかなり有名なバンドにまでなっていた。
月に二回程のライブにも大勢のファンが足を運ぶようになっていた。
…全てハルヨシの力だったよ。
それは12月に入ってすぐの頃…俺の16回目の誕生日のすぐ後のことだった。
87 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 17:41:30 ID:IlqGnrkB
その頃の俺にはバンド仲間とは別に、悪い仲間が出来始めた。
多感な16歳の少年が道を踏み外すお決まりのパターンでも想像してくれ。
全てに反抗してみせることがロックなんだと思い込んでいた。俺も若かったんだ。
気付けばケンカとバイクに明け暮れる日々…バンドの練習の頻度は徐々に少なくなっていた。
ハルヨシはそんな俺を見るたびに
「ギタリストなんだから手は大事にしろよ」
と繰り返していた。
正直に言おう。あの頃の俺はハルヨシに対して激しい嫉妬心を抱いていた。
自分が少し上達するたびに、ハルヨシと俺との差がはっきりと理解できる。
そんなバンドに嫌気がしていたのも確かだった。
その日は久しぶりのバンド練習を終え、各自家に帰ろうとしていた。
日付はもう変わろうとしている。
俺はその日、誕生日プレゼントにと族の仲間から格安で買い取った
ボロボロのXJ-Rに乗っていた。もちろん免許はない。
バイクを手に入れてゴキゲンだったんだな。珍しく上機嫌でバンド練習に参加したよ。
俺はバイクが嬉しくて…嫌がるハルヨシを強引にタンデムに乗せて帰ることにした。
ハルヨシはサブギターをガレージに置きっ放しにしてたから、
ハルヨシの背中には俺のストラト、俺の背中にはハルヨシ…
ボロボロのXJ−Rは夜の街に走りだした。
88 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 17:57:35 ID:IlqGnrkB
遠くから救急車のサイレンの音が聞こえる…
俺はアスファルトの上に大の字に寝転がって、星空を見上げていた。
何が起こった?わけがわからない…
確か今日は練習を終えて、そのあとバイクで帰って…
その前後の記憶がひどくぼんやりしている。
いつもの国道を絶好調にブッ飛ばして…
ファミレスの角を曲がって…
そして目の前に迫るトラックのヘッドライトを思い出した瞬間
俺は全てを理解した。
やっちまった…
無免で事故ってのはどうなるんだろ?
金とかかかんのかな?
最初はそんなことが頭をよぎった。
…ハルヨシは!?
思い出した俺は体を起こそうとしたが、脇腹と左足に激痛が走った。
激痛に身をよじらせながら、何とか体の向きを変え辺りを見回してハルヨシを探した。
体中に走る激痛、ぼんやりとした頭…
どこか現実離れした感覚の中、俺が目にしたものは………
5メートルほど離れたところのガードレールにもたれかかっている、
ハルヨシの姿だった。
89 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 18:12:51 ID:IlqGnrkB
怪我の程度は俺の方が重症だった。
アバラ3本と左足の骨折だ。打撲と裂傷は体中にあった。
ハルヨシの体にはほとんど怪我という怪我はなかったんだ、ただ…一箇所を除いて。
左手の粉砕骨折。それがハルヨシがあの事故で負った唯一の怪我だった。
よりによって左手。ロックの神様に愛されていたはずのヤツの手。
これから世界中を感動させるはずだったヤツの手。
俺が奪ってしまった。
「ギタリストなんだから手は大事に」
ハルヨシは普段から俺にこう繰り返していた。
なんて皮肉だ…
ケンカで人を殴りつけてきた俺の手は、
悲しいぐらいに無傷だった…。
90 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 18:43:40 ID:IlqGnrkB
俺が退院したのは年が明けて一週間も経った頃だった。
家族は俺の事故の後始末で正月どころじゃなかったらしい。
あれからメンバーが何度か見舞いに来た。事故の様子もその時に詳しく聞いた。
バイクは大破、死ななかったのが不思議なぐらいの事故だったと。
ドラマーが最初に見舞いに来たとき、俺のストラトを持ってきた。
救急車が事故現場に着いたとき、ハルヨシは俺のストラトを抱えたままだったそうだ。
ボディーに若干の凹みがあったが、俺のストラトは殆ど無傷といっても良い状態だったよ。
ハルヨシは…結局ハルヨシが俺の病室に姿を現すことは無かった。
他のメンバーからハルヨシの怪我のことも聞いた。
切断は免れたが、もう元のように動くことはないだろう…と。
結局バンドの核であるハルヨシがいなくなることで俺達のバンドは解散へと向かっていった。
事故から約一ヶ月…あれから俺はギターを弾けないままでいた。
92 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 18:56:27 ID:IlqGnrkB
天才の…親友の手を奪ってしまった俺が、どのツラさげてギターを続けられるっていうんだ?
俺は…ロックとの決別を意識し始めていた。ストラトもあの時のままだ。
忘れられない運命の日は突然やってきた。
日付までしっかり覚えているぜ。
1月17日。
俺を再びロックの道へ引き戻してくれたのは、
ハルヨシとこの後に出会うナツの存在だった。
しかしそれは同時にハルヨシとの別れの時でもあった。
…これはまた、別の機会に語るとしよう。
------------------------------------------------
96 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 20:41:51 ID:Ow4OLRDk
あの頃のことをひとつ思い出す度に、ひとつ…またひとつ、
とめどなく思い出される数々の記憶。止まらなくなっちまったよ。
最後まで聞いてもらうとしようか…
あの運命の1月17日から始まった俺とハルヨシと…
ナツの物語を。
97 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 20:57:28 ID:Ow4OLRDk
あの事故以来、眠れない夜が続いたよ。
退院して自宅に戻ってからも同じだった。
その日も俺は眠れずにいた。時計を見ると朝の5時を過ぎていた。
「また眠れなかったな」
そう思ったときに部屋のすみに置いてあったストラトがふと気になった。
あれ以来ギターケースにしまったままだ。
俺が暫くストラトに見入っていると…カタカタカタ…なにかが小刻みに揺れる音。
続いてベッドに横になった俺の体が衝撃と共に浮き上がるような感覚。
地震!?
俺はやめたはずのギターを…ハルヨシが守ってくれたストラトを抱え
松葉杖もつかずに転がるように部屋を飛び出した。
98 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 21:20:01 ID:Ow4OLRDk
家の中は目茶苦茶だった。窓から見えていた景色も全く違っていた。
幸いにも俺の家族は全員無事だった。家も全壊は免れた。
近所のあちこちで火の手が上がりはじめた。俺達は取る物もとりあえず、避難所へ直行したね。
俺はストラトだけを抱えてな…
小学校の体育館には続々と人が集まってきた。その中にハルヨシの姿もあった。
ハルヨシは俺に気付くとこっちに近寄り、なにか言おうとしたが
俺は気付かないふりをして人込みに紛れてしまった。
合わせる顔が無かったんだよ。ヤツからギターを奪っちまった俺に何を言えって言うんだ?
99 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 21:34:19 ID:Ow4OLRDk
ハルヨシの家族は無事だったが家のほうは全壊だったらしく
ハルヨシはその後暫く避難所生活を余儀なくされる。
俺は家に戻り、またハルヨシとは顔を合わせることの無い日々が続いた。
俺達が別れるその日まで。
そんな時出会った女が
ナツだった。
左足のギブスを外しに行った病院から…俺達の出会いは始まった。
101 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 22:02:43 ID:Ow4OLRDk
病院の待合室は混み合っていた。待たされるのは承知の上だ。
俺はソファに座り、待合室のテレビをぼんやりと眺めていた。
その時、看護婦に連れてこられて俺の隣に座った女がいた。
座るなり鞄の中からヘッドフォンを取出し、大音量で聴き始めた。
ヘッドフォン越しに聞こえるジャカジャカという音。
…どこかで聴いたことのある音。俺は耳をすます。
それは俺達のバンドのデモテープだった。
普通なら嬉しいはずなんだが、その時の俺には拷問に近いものだ。
曲がちょうどハルヨシのギターソロに差し掛かった時、俺は堪らず話し掛けた
「ボリューム下げてくれ」
102 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 22:13:19 ID:Ow4OLRDk
当然聞こえる筈がなく、女は目を閉じたまま聴き入っていた。
俺が女の肩をトントンと軽く叩と、女はビクッとし慌ててヘッドフォンを外した。
「あの…ボリュームを…」
女の様子に面食らった俺が恐る恐る言うと、
「ごめんなさい、大きかったですか?」
慌てて頭をさげる。
??
女はさっきからずっと目を閉じたままだった。
103 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 22:33:44 ID:Ow4OLRDk
俺達が出会ったとき、既にナツは光を失っていた。
あの日、落ちてきた梁の下敷きになったが奇跡的に救出されたのだ。
父親は即死だったという。
元々父親と二人暮しだったナツは、地震により視力とたった一人の家族を奪われちまったんだ。
ギブスが取れてからも俺は彼女の病室に足を運んだ。
光を失い、一人ぼっちになっても明るさを失わないナツに
あの事故以来腐っちまってた俺は惹かれ始めていた。
ナツは俺達のバンドのファンだった。
俺がそのバンドのギタリストだということを打ち明けると
ナツは飛び上がって喜んだよ。
104 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 22:50:03 ID:Ow4OLRDk
恋心なんて呼べるもんじゃなかった。
俺は自分の苦しみを少しだけでも癒してくれる存在をナツに求めていた。
ナツもまた一人になった寂しさを埋められる存在を俺に求めていたのかも知れない。
早い話、傷の舐めあいさ。
それはジョンとヨーコのような関係じゃなく、
例えるならシドとナンシーのような…
不安定で壊れやすい、そんな関係だった。
とにかく俺はナツに全てを話した。
オヤジのこと。ハルヨシのこと。バンドのこと。そして、事故のことも。
106 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 23:06:13 ID:Ow4OLRDk
自分より遥かに不幸な境遇の彼女に全てを打ち明けることで精神のバランスを保とうとしたんだ。
とんだ大バカ野郎だろ?
疲れてたんだ。他のメンバーが
「お前の手が潰れりゃよかったんだ」
なんて思ってるんじゃないか?そう考えてしまう程に。
ナツは俺の話を聞いても、特になにかを言うわけじゃなかったけど
聞いてくれるだけで随分楽になったもんだ。
病室に行く度に、ナツは俺にギターを弾くことをせがんだが
俺は断り続けた。
俺はまだ…ギターを弾けないままでいた。
そして、俺にはハルヨシとの別れが待っていたんだ。
-----------------------------------------------------------
126 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 16:32:36 ID:sKIRqojV
ハルヨシのお袋さんはあまり身体の丈夫な人じゃなくてな。
結局避難所生活に耐えかね、遠い親戚を頼って家族全員で
静岡に引っ越すことになったんだ。
そんなことを知らない俺は、ハルヨシに会おうともせず
相変わらずナツの病室に通い、自分の苦しさを誤魔化していた。
もう、全てを忘れてしまいたかった。
ハルヨシのこともギターのことも。
俺がメンバー…いや、元メンバーに聞き、そのことを知ったのは
ハルヨシがこの街を出るその日のことだった。
会って何を言おうとしたのかわからない。
だが俺の足は避難所へと向かっていた。
俺が避難所へと着いた時、既に荷物はトラックに積み終わっていた。
トラックに乗り込もうとするハルヨシを見つけた俺は叫んでいた。
「ハルヨシ!」
128 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 16:43:27 ID:sKIRqojV
ハルヨシは俺に気付いた。こっちを見ている。
何か言わなくちゃ…何を言えばいいんだ?
言葉が出ない…
俺達の距離は数メートル離れていた。
ハルヨシも…何も言わない。いや、言えないんだろうか…
無言のままお互いをじっと見据えている俺達二人。
どのぐらいの時間が流れたのかわからない。
ほんの数秒だったような気もするし、数分経っていたような気もする。
そのうちにトラックの運ちゃんがしびれを切らしたのか、
クラクションを軽く2回鳴らした。
ハルヨシはハッとし、トラックに乗り込もうとする。
ハルヨシが行っちまう…
頭の中で言葉がグルグルと回り始める…その時だった。
トラックに乗り込もうとしたハルヨシがもう一度俺を見た。
別れの挨拶だったんだろうか…軽く手を挙げたあとに…
……笑ったんだ。
130 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 16:53:40 ID:sKIRqojV
何故…?何故笑える?
いっそツバでも吐き捨てて、罵声の一つも浴びせてくれりゃよかったんだ。
ハルヨシがそんな顔で笑ったら俺は自分をどうすりゃいいんだ?
愚かだった俺が、別れ際のハルヨシの笑顔の意味に気付くのは、
ずっと後のことだ。
ハルヨシがいなくなり、ギターも弾かなくなった俺に残されたもの…
俺にはもうナツの存在が全てだった。
132 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 17:09:28 ID:sKIRqojV
季節は夏になっていた。
相変わらず毎日のように俺はナツに会いに病院に行く。
一日に1時間かそこらだが、
ナツに会っている間、ナツと話している間、俺は全てを忘れていられた。
不思議にも話すことは尽きなかったな。
とりとめのない話。小さかった頃の話。学校生活の話。
初恋の話。家族の話。生まれた街の話。そして夢の話。
ナツの夢は絵描きだった。
それを聞いた俺は最初、目が見えなくなってしまったナツに同情したもんだ。
だが彼女は…
「見えなくても手が動けば絵は描けるよ」
と言い、更に
「手がダメになったら口もあるしね」
と付け加え、明るく笑うのだった。
どうしてそんなに強くいられるのか?
左手を失い、最後に笑ったハルヨシも…
光を失っても絵を描くことを諦めないナツも…
なぜ笑えるんだろう?
あの頃の俺には理解できなかったよ。
136 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 17:39:37 ID:sKIRqojV
ある日、ナツが二人で出掛けたいと言い出した。
目の見えないナツは一人じゃ外に出ることも出来ない。
だから俺を付き添いに、外の空気を吸いたい…とな。
別に構わないけど、と俺が言うとナツは喜んで
担当の看護婦に外出の旨を伝えに行く。
別に外泊するわけでもないし、用意もそこそこに
俺達は病院を後にした。
病院を出る時、看護婦に
「危ないから絶対に走ったりしないように」と強く念押しされた。
そうだよな…目が見えないんだし、走ったりして転んだら大変だ。
俺達は電車で1時間ほどのところにある、
ナツの生まれた街に来ていた。
ここのお好み焼きが美味しいんだよ、とか。
画材を買うのはここの文具屋さん、とか。
目が見えないとは思えないほどに、ナツのナビは完璧だった。
鮮明に残る記憶を頼りに、ナツは自分の生まれた街を俺に案内する。
その日俺達は初めて手を繋いで歩いた。
初めて触れるナツの手。
力を込めると潰れてしまいそうな程華奢なナツの手は
とても暖かで、柔らかだった。
137 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 17:56:33 ID:sKIRqojV
日が暮れかけて来た頃、もうそろそろ帰ろうかと言い出した俺に
ナツは「お願いがある」と言い出した。
今日の外出の本当の目的はその「お願い」にあったらしい。
ナツの思い出の場所…小学生の頃の、両親との思い出の場所。
夏が訪れると必ず行った向日葵畑がこの近くにある。
自分はもうその向日葵を見ることは出来ないが、
俺にそれを見て欲しい、と。
最後に行ったのはもう6年も前の話で、
父親にもその向日葵畑を見せてあげたいから…
俺が見た向日葵畑の風景を元に絵を描こうというのだ。
出来上がった絵は父親の仏前に供えるから
しっかり覚えて帰ってね、とナツは笑った。
138 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 18:13:47 ID:sKIRqojV
その場所に辿り着いた俺はナツに訊いた、
「この場所で…間違いない?」と。
ナツの案内どおりに小さな酒屋の角を曲がった先に
その場所はあった。酒屋の名前も一致している。
ただ一つだけ違っていたもの。
俺の目に映ったものは…アスファルトで綺麗に舗装された
駐車場だった。
風景を覚える自信なんてなかったから、来る途中で
インスタントカメラも買った。
ナツは「どう?」と俺に訊いた。綺麗でしょう?とでも言いたげに。
「うん、すげぇな…こんなにたくさん向日葵見たのは初めてだ」
俺の口から咄嗟に出た言葉…最初で最後の嘘だったよ。
俺の言葉から何かを感じ取ったのか、
ナツの手が一瞬こわばるのがわかった。
でもナツはいつもの笑顔を俺に向け
「ありがとう」
と言った。
その言葉がこの場所まで連れて来たことに対するものなのか、
それとも俺の嘘に対するものだったのか…今となってはわからない。
ナツが死んだのはそれから3日後のことだった。
141 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 19:23:17 ID:sKIRqojV
帰りの電車の中、久しぶりに外に出たナツは疲れちまったのかずっと眠っていた。
病院に着いた後、別れ際に眠そうな目を擦りながらナツは俺にこう言った。
「ギター、やめないよね?」
不意をつかれた俺は思わず「うん」と返事をした。
それが俺とナツの交わした最後の約束になっちまった。
「今度聴かせてね」そういってナツは俺に手を振っていた。
家に着いた俺は、あの事故以来初めてストラトを手に取った。
その時の俺は親友の左手を奪っちまった重荷のことは忘れていた。
ナツに俺のギターを聴いてもらいたい…それが俺が考えることの全てだった。
ところがアンプに挿したストラトはウンともスンとも言わなかった。
あの事故でどっかイカレちまったのか?
一晩かかって直そうとしたけど…結局ストラトが直ることはなかった。
145 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 21:36:43 ID:Xve/YB65
次の日病室にナツの姿はなかった。
顔見知りになっていた看護婦がナツに会わせてくれた。
ストレッチャーに乗せられたナツは別室にいた。
怪我は目だけだと思っていた。何故いつまで経っても退院できないのか、
疑問に感じなかったあの頃の俺が今思えば不思議でならない。
ナツの体にはあの地震の日以来、小さな瓦礫の破片が無数に埋まったままになっていた。
心臓とその近くの血管にくい込んだ破片は外科的処置ではどうにもならなかった。
146 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 21:51:48 ID:Xve/YB65
十年後だったかもしれない、一年後だったかもしれない、あるいは
ナツの寿命が尽きる時まで来なかったかも知れないその時は、
その日突然やってきた。
ナツはストレッチャーに乗せられたまま手術室へと運ばれていった。
俺は呆然としたままで、どうやって帰ったのかは覚えていない。
これは現実なんだろうか…虚ろな感覚…沸かない実感…
ナツが死ぬ?嘘だろ?
147 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 22:04:18 ID:Xve/YB65
次の日はICUのナツをガラス越しに見ただけだった。
無数のチューブが繋がれたナツを、それ以上見ていられなくて俺は病院をあとにした。
家に帰り着いた俺を待っていたのは
…ハルヨシから届いた荷物だった。
149 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 22:37:45 ID:Xve/YB65
送られてきた荷物はハルヨシのメインギター、ギブソンのレスポールクラシック。
あの事故がなければハルヨシと共に世界で活躍することになっただろう…
そのギターだった。
ハードケースに納められたそのギター以外には何もなかった。
手紙やメモの類もだ。
俺に…弾けっていうのか?
このギターを…ハルヨシのギターを…
お前からギターを奪っちまった俺に…?
…出来るわけねえ。
でもなハルヨシ…明日一日、一日だけ使わせてもらうぜ。
ナツにガラス越しでもいい…俺のギターを聴かせる為に。
その後は…お前からギターを奪った俺はもうギターは弾かねぇよ。
152 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 23:18:38 ID:Xve/YB65
俺はオヤジから買ったアンプとハルヨシのギターをその手に持って病院へ向かった。
ICUのガラス越しにギターを弾く許可を貰おうと思って
あの顔見知りの看護婦を探した。
ICUの前で見つけた看護婦は泣いていた。
それだけで全てが理解できた。
繋がれていたチューブは全て取り去られ、ナツは眠っているようにそこに横たわっていたよ。
俺はナツにギターを聴かせることが
とうとう出来なかった。
最後に触れたナツの手に、あの時感じた温かさは無く
冷たさだけが俺の手の平に伝わって来た。
153 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 23:33:33 ID:Xve/YB65
日が暮れるまで、俺はナツと過ごしたあの病室にいた。
不思議だが、実感がないと涙って出ないもんなんだな。
胸にポッカリと穴があいたような…って言うのはこういう感じを言うんだな…
こんな風に自分でも驚く程冷静に、この大きな喪失感を分析していた。
看護婦にでも頼んで買ってきてもらったんだろうか、
夕日に照らされた新品のキャンバスが、主を失ったベッドの隣にひっそりと佇んでいた。
向日葵が描きこまれることはなく。
157 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 23:55:25 ID:Xve/YB65
その夜、俺はあのガレージにいた。
俺の、俺達の青春とも呼べるあのガレージに自然と足が向かっていた。
突然訪れた俺に驚いたベーシストだが、俺の様子と俺が持っていたハルヨシのギターに気付くと、
何かを察したのか、
「使えよ」
そう言ってガレージの鍵を開けてくれた。
鍵を開けた後は何も言わずに俺を一人にしてくれた。
あの時のことは感謝している。
一人になって暫くすると、色んな事が頭の中を駆け巡った。
ロックを教えてくれたオヤジ、
ギターを奪っちまったハルヨシ、
死んでしまったナツ。
159 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/18(火) 00:09:19 ID:j+vJqmSs
おもむろにハルヨシのギターをアンプに繋ぐ。
そしてジャランとギターを鳴らした瞬間…
一気に来た。込み上げて来た。
俺は声を上げて泣いていた。
叫び声に近い声で泣いていた。
ギターを掻き鳴らしながら泣いていた。
殴ったこの手で。
奪ったこの手で。
握ったこの手で。
ギターを弾きながら泣いていたよ。
161 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/18(火) 00:18:42 ID:j+vJqmSs
もう少しで話も終わるとこだが、今日の所はこの辺りで寝るとしよう。
気になってるヤツもいるようだから、一言付け加えておくが、
数年後に俺とハルヨシは再会することになる、
ロックンロールのグルーヴの中で。
--------そして、翌日。
205 :13◇/koT5II8pU:2005/10/19(水) 19:49:50 ID:4wws0pTS
俺はその日ハルヨシギターを抱きながらガレージで寝ていたよ。
3日後街フラフラ歩いていると見覚えのある顔があった…。
その人は俺にロックの魂を教えてくれた親父だった。「親父!!」俺は思わず声をかけた。
親父はその声に気付き走るように去っていったんだ…
なんでだよ…なんでみんな俺の下から去っていくんだ?
親父もハルヨシも…そしてナツも…
俺はナツという生きる支えを失って、まさしく廃人になっていた。
ハルヨシのギターもあの時以来ケースから出してさえいない。
そんな俺に新たな出会いがあった。そうそれは今日のように肌寒い夜の事だった。
214 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 21:49:06 ID:mUiQQdXn
泣き尽くしてしまったのか、俺はハルヨシのギターをスタンドに立てて
ちょうど向かい合うようにアンプにもたれて座っていた。
ガレージの中は静かだった。
さっきまでのギターの爆音が、この静けさを一層際立たせていた。
ナツが死んだのが運命なのだとしたら、俺達は何故出会ったんだろう。
俺じゃなくてもよかった筈だ。
ナツに何もしてやれなかった俺じゃなく。
出会ったのが俺じゃなければ、ハルヨシはギターを失わずに済んだ筈だ。
運命は、神様は俺に何を望んでいるっていうんだ。
215 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 22:08:40 ID:mUiQQdXn
ナツを失ったこの苦しみが親友の夢を奪った俺の贖罪なのか…?
いくら考えても答えは出なかった。
ガレージの窓の向こうはうっすらと明るくなっている。
俺の記憶に残るナツの顔は常に笑顔だった。
明日死ぬかもしれない。
身体の中の小さな破片がいつ自分の命を止めるかわからない。
どれ程の不安と恐怖がナツを襲っただろう。
それでもナツは、もう二度と光を感じることの無いその目で
夢を…未来を見ていたよ。
ナツの最後の言葉が頭の中に響いてくる。
何度も、何度も。
「ギターやめないよね」
「今度聞かせてね」
216 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 22:22:19 ID:mUiQQdXn
明日死ぬかもしれない…それは本当は当たり前のことなんだよ。
その現実が俺達は極端に薄っぺらく、ナツには分厚かった。
それでもナツは前を見た。
俺は…?
俺は何をやっている?
俺は今、生きてるじゃねえか!こんなにも!
ハルヨシのギターが囁いたような気がした。
「お前が弾いてくれよ」
俺はギターを弾いてもいいのか?
ハルヨシ、お前は俺を許してくれるのか?
217 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 22:31:59 ID:mUiQQdXn
ハルヨシの気持ち。
ナツの気持ち。
俺はギターを弾かなきゃいけない。
なによりも俺の気持ち。
俺はギターを…弾きたい!
その瞬間、俺の瞼の裏に
うなずきながら笑うナツがいた。
向日葵のようなあの笑顔で。
俺が一つの答えに辿り着いた時、
長かった夜は終わりを告げていた。
ガレージの小さな窓からは、昇ったばかりの朝日が
まるでスポットライトのように
ハルヨシのギターを照らしていた。
218 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 22:49:04 ID:mUiQQdXn
あれ以来、俺の街ではよく向日葵を見掛けるようになった。
見る度に
「忘れちゃやだよ」
そう言って悪戯っぽく笑う。
あの笑顔でな。
時は経ち、それは今年の春のことだった。
ロックンロールの神様が意地悪に組み立てた歯車達が
静かにゆっくりと
回り始める。
221 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 23:08:50 ID:mUiQQdXn
俺は生まれた街を離れ、神奈川のとある街にいた。
あれから…ナツが死んでから俺はこの手で人を殴ったことはない。
わかったんだ。俺のこの手は殴る為にあるんじゃないからな。
ギターを弾く為さ。
何かを得ては失ってきたけど、もうこぼさない。
絶対にこぼしちゃいけないものが、今俺の手の中にある。
大事な女が。
女の左手には、指輪が光っている。
ギターを弾く、俺の左手にもな。
222 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 23:20:22 ID:mUiQQdXn
東京の小さなライブハウスに行った時のことだ。
すげえヴォーカルがいた。
決して綺麗な、聴きやすい声じゃないんだが…鳥肌が立ったのを覚えている。
ステージの上のその姿は、紛れも無いハルヨシの姿だった。
225 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 23:32:58 ID:mUiQQdXn
ステージで歌うハルヨシの手にはギターが握られていた。
あの頃の手の動きじゃないけど、
最高にカッコよくパワーコードを掻き鳴らしていたよ。
動かないと言われたあの手が。
思わぬ再会を果たした俺達。
この冬、俺達のバンドが動き始める。
今は便利になったもんだ、ネットを通じてハルヨシとやりとりし、曲も順調に出来てきている。
来月ハルヨシは俺の近所に引っ越してくる。俺とバンドをやる為に、
仕事も辞めちまったんだと。
227 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 23:57:42 ID:mUiQQdXn
ギターを弾けなくなってもハルヨシはロックを諦めなかった。
歌うことで。
「手が動かなくてもロックはできるぜ」
そう言って笑うハルヨシに、俺はあの時見たナツの笑顔を重ねていた。
あの事故から十年経った今じゃ、パワーコードと簡単なオブリぐらいなら
弾けるようになっちまった。
動かないと言われたヤツの手が、ここまで来るのに
一体どれ程の苦労があっただろうか。
やっぱりアイツはロックの神様に愛されていたんだな。
231 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/20(木) 00:09:43 ID:BCLB9urM
そして先月、俺は父親になった。
まだ産まれちゃいないけどな。
産まれるのは夏頃になりそうだ。
ちょうど向日葵の綺麗な頃だと思う。
俺はオカルトチックなことはあんまり信じない質なんだが、
ロックの神様がいるのなら……
産まれてくるのはきっと、
女の子だ。
向日葵のような笑顔の
女の子に違いない。
名前は……
決まってるよな?
233 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/20(木) 00:23:44 ID:BCLB9urM
長かったが、これが俺とハルヨシと
そしてナツの物語だ。
この物語はまだエンディングを迎えていないんだよな。
エンディングは…これからの俺達次第さ。
さっきも書いたがもうすぐ俺達のバンドが動き始める。
いつか…左手に傷のあるヴォーカルと
アンプの側にストラトを置いて、ピックガードのないレスポールを使うギタリストを見掛けたら…
ロックンロール!と叫んでくれ。
俺達は頑張るよ。
いつか日本のどこかにいるオヤジに
俺達の曲が聞こえるように。
そして、俺のギターが
天国のナツに届く
その日まで。
234 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/20(木) 00:26:32 ID:BCLB9urM
最後におまえらに問うぜ。
その手は
なんの為にある?
ロックでいろよ!
----------------------
(うw;`)
改めて読み返して泣きそうになった・・・
えぇ話や・・・・
本スレには、上に乗せたの以外にも。13氏のレスとかがまだ乗ってるので
是非一度目を通してみることをオススメします(;;
最近、とても感動した話があるの。
その日も、いつも通りに
電車ん中で京ぽん使ってバンド板を見てたんだけど。
一番上に、「エレキギター選び」ってスレがあって。
確かその時は130レスくらいついてて、
あー。また釣りスレか。たたかれあらされまくってるんだろうなぁ・・とか思いつつ見てみると、なんか
「>>13感動したぜ!」とか「>>13泣いた(;;」
とか書かれてて。何かと思ってみてみたら
なんか、13氏の語り みたいなのが乗ってたの。
最初、まったりレスでスレが始まってて、
そこで13氏が
13 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/03(月) 16:59:15 ID:i7zqReiR
いいか?
楽器選びなんて言ってる時点でダメだ。
俺は楽器選んだりしてないぞ。
ギターが俺を選んだんだよ、それがロックだろ。
要するにフィーリングだ。
ピンと来るギターがあれば予算オーバーだろうがなんだろうが
親を質に入れてでも買え、闇金融で借金してでも買え。
それがロック。
どれを買っていいかわからないというのは
残念ながら君はギターに選ばれなかったと言うことだ。
って書き込みをして。
その直後、語りが始まったのですよ。
ちょっと以下に、要点だけ掲載してみるから、まぁ読んでみ?
-------------------------------------------------------
13 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/03(月) 16:59:15 ID:i7zqReiR
いいか?
楽器選びなんて言ってる時点でダメだ。
俺は楽器選んだりしてないぞ。
ギターが俺を選んだんだよ、それがロックだろ。
要するにフィーリングだ。
ピンと来るギターがあれば予算オーバーだろうがなんだろうが
親を質に入れてでも買え、闇金融で借金してでも買え。
それがロック。
どれを買っていいかわからないというのは
残念ながら君はギターに選ばれなかったと言うことだ。
17 :13:2005/10/03(月) 17:33:47 ID:i7zqReiR
よし、じゃあ俺が初めてギターを買ったときの話をしてやろう。
あれは中2の時だ、女にモテたい一心でギターに手を出すことにした。
最初は>>1みたいな状態だったよ。
どれもこれもピンと来なくてな、
動機が不純なだけにギター買うのやめようかと思ったよ。
そんな時出会ったのさ、
フェンダーストラトキャスター。
中古でな、お世辞にも綺麗なギターじゃなかった。
でも同じようなストラトなら幾つも見て来たはずなのに
そいつが俺を選んだんだよ。ピンときたね。上手く表現できないが、ピンときたのさ。
18 :13:2005/10/03(月) 17:40:57 ID:i7zqReiR
買おうとしたけど中学生に買える値段じゃなかった。
でも俺は諦めなかったね。
まず店員のオッサンに土下座。さらに一時間説得して
小遣い+今年のお年玉+来年のお年玉
全額渡す約束して、やっと売ってもらったよ。
今でもそのギターは俺の原点だから大切にしてるよ。今じゃ他にも何本か持ってるけど
No.1はそいつしかいねえ。
例えるなら最高の女に出会ったようなもんなのさ。
19 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/03(月) 20:20:49 ID:E1gL/Gfi
>13
てめぇ・・・漢だよ
21 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/04(火) 19:33:43 ID:8v5eFISy
結局代金は完済したのかい?
24 :13:2005/10/06(木) 12:29:07 ID:5+syNZjZ
>>21
よし、じゃあその時の話をしてやろう。
それからというもの、俺は毎月欠かさず小遣い持って楽器屋に行ったよ。
行く度に入り浸っては楽器屋のオヤジとロック話に花を咲かせたもんさ。
ギター一本限りでアンプすら持ってなかった俺にとっては最高の練習の場でもあったんだ。
それはその年の正月が明けて少し経った頃だ。
約束通り俺は貰ったお年玉を握りしめ楽器屋に走った。
一円足りとも遣わずに。
息を切らしながらお年玉の入った封筒を差し出した俺にオヤジはこう言ったよ。
25 :13:2005/10/06(木) 12:39:56 ID:5+syNZjZ
「金はもういらん」と。
「ギターは今までもってきた金で売ってやる。そのかわりにその金でアンプとエフェクターでも買っていけ」とな。
俺は一旦は遠慮して断ったさ。
だがオヤジの強い勧めで、充分にお礼を言った後甘えさせてもらった。
最高に嬉しかったぜ。
憧れだったオーバードライブのエフェクターを手に取った俺にオヤジはこう言った。
「バカ野郎、歪みなんてものはアンプで作るモンだ。最初からそんなモン買うんじゃねえ」
目からウロコだったね。
26 :13:2005/10/06(木) 12:52:11 ID:5+syNZjZ
あれこれとオヤジのアドバイスを受けながら、
結局選んだのはディレイとワウペダルに小さめのアンプ。
この三つだった。
アンプはともかくディレイとワウは今でも使ってる俺のフェイバリットだな。
今俺が使ってるギターでも最高のエフェクトをくれるニクイ奴らさ。
あれから十年以上経つが、今でもオヤジの言うとおり
アンプで歪ませるのが俺のスタイル。これからも変わらないよ。
残念ながらその時がオヤジに会った最後の時だったよ。
オヤジ…元気でやってるか?
俺は今でも「ロックしてる」ぜ。あんたが教えてくれた
ロック魂と共にな。
27 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/06(木) 12:57:57 ID:Sf9dEd6c
アンプで歪ますって事はもちろんセンドリターンは付いてたんですよね?
30 :13:2005/10/06(木) 19:37:01 ID:5+syNZjZ
>>27
よし、じゃあその時の話をしてやろう。
その時買ったアンプはな、ボリューム、ゲイン、トーンの三つしか付いてないようなヤツだったんだよ。
オヤジはもっといいアンプを勧めてたけど、
俺は今回は後払いにはしたくなくて、予算内に納めようとしてそうなった。
あれは今思えば「虫の報せ」ってヤツだったのかもな。
そんなアンプだったもんだからな、
充分な歪みなど得られなかったよ。
付いたアダ名は
「ベンチャーズ」さ。
可笑しいだろ?笑えよ。
33 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/06(木) 22:46:25 ID:MuPFeYhN
>>30
その後、歪みを得ることはできたのか?
36 :当方名無し、全パート募集中 :2005/10/11(火) 16:35:17 ID:Czv2eK7X
>>13
そのオヤジはどうなった?
続きキボーン
39 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/13(木) 18:21:25 ID:hy6StVaH
>>33
あぁ、かなり後になってからの話だが、
初めてドでかいマーシャルにギターを繋いだ時の
あの感動は忘れられねぇな。
「オヤジの言ってたのはコレかぁっ!」て感じだな。
40 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/13(木) 19:10:06 ID:hy6StVaH
>>36
よし、じゃあそのときの話をしてやろう。
あれはエフェクターを売ってもらってから
一週間程経った時のことだった。
俺の住む街に、その年初めての雪が降った…
とても寒い日だったよ。
俺はその日、やっとの思いでマスターした
覚えたてのフレーズを早くオヤジに聴かせたくて
楽器屋へと走っていた。
ワウとディレイを駆使した
ファンキーなフレーズだったのを覚えている。
楽器屋に着いた俺が目にしたのは、
数々のギターたちがスポットライトを浴びていたショーウインドーは電気が消され、
入口にはシャッターが下ろされていた
42 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/13(木) 22:48:48 ID:hy6StVaH
こう言っちゃあなんだが、
オヤジの店には営業時間てもんがなかった。
夜は大体遅くまでやってたけど、
店が開くのは昼過ぎからが多かった。
夕方から開く時もあったし、暗くなってからの時もあったんだ。
今日はもう開かないのかな?なんて思ったりもしたけど、
それは有り得なかった。
その日は約束があったんだ。
だから俺は
「どっかで酒でも呑んでるんだろう」
なんて考えていた。
俺は雪除けに店の前のアーケードの下に座り、
店が開くのを待っていた。
雪は段々と積もりはじめ、街灯には灯がともりはじめた…。
46 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 12:37:55 ID:JF2Vd8YE
翌日、俺は高熱で寝込んじまった。
とうとう店が開けられることはなく、オヤジが現れることもなかった。
高熱にうなされながら俺は夢を見たんだ…
今も忘れない鮮明な夢を。
俺は真っ赤なオープンカーの助手席に乗り、だだっ広い荒野を走っていた。
運転席ではジミーペイジがハンドルを握っている。
俺は有名なツェッペリンのあのナンバーのアルペジオ部分を奏でていた。
ふいに車の横にハーレーに跨がったオヤジが現れた。
「聴いてくれよ!あのフレーズが弾けるようになったんだ」
でもオヤジは申し訳なさそうな、そして少し寂しそうな目をしたあとに…
47 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 12:43:44 ID:JF2Vd8YE
ニカッと笑って俺にこう言ったよ。
「ロックでいろよ」
「達者でいろよ」とでも言いたかったんだろうか、
オヤジはハーレーのアクセルを開け、走り去ろうとした。
俺はジミーにスピードを上げるように言ったけど
ジミーは首を横に振るだけだった。
オヤジの姿が地平線の向こうに消えたところで…
俺は目を覚ました。
55 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 18:09:16 ID:JF2Vd8YE
俺の熱が下がったのはそれから二日後のことだった。
あれから楽器屋のシャッターが開けられた様子は無い。
電話をかけてみたが、あの無機質な女の声が俺を苛立たせるだけだった。
それは二日ぶりに学校へ行った時だった。
給食を食いながら
「オヤジは一体…」
そんなことばかりを考えていた俺を呼ぶ声がした。
呼んでいたのはクラスの女の子だ。
他のクラスの男子が俺に会いに来てる…と。
それは後に俺の生涯の友となるハルヨシとの、
運命の出会いだった。
56 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 18:24:34 ID:JF2Vd8YE
ハルヨシは控えめな男だった。
決して真面目な優等生ってわけじゃないが、
なんていうか…クール、そうクールでニヒルな奴だった。
俺は文化祭なんかじゃ喜んで前に出ていくタイプでな、
早い話が「お調子者」さ。
そんな俺とハルヨシだから勿論話したことなんか無かったし、
名前も顔もうろ覚えな間柄。昼休みにクラスに訪ねてくるような仲じゃなかった。
オヤジのことで頭がいっぱいだったから、正直「面倒臭え」と思ったよ。
怪訝な顔の俺に会うなりハルヨシはこう言った。
59 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 19:25:21 ID:JF2Vd8YE
「楽器屋…」
訳がわからずハァ?という顔をしている俺にハルヨシは続けた。
「よく行ってたよな?」
俺は驚いたよ。その時の俺には一緒に音楽やる仲間はいなかった。
友達がいなかった訳じゃないがな。
だから楽器屋に行くときはいつも一人だった。知ってる奴がいるはずなかった。
ハルヨシの話によると…
オヤジの店は随分前から経営が苦しく、借金でどうにもこうにもならなくなった…と。
あの店もとうとう他人の物になっちまったらしい。
60 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 19:56:05 ID:JF2Vd8YE
雪が降った日の前日、ギターの弦を買いに行ったハルヨシはその話を聞き、
俺にそのことを伝えるよう頼まれた。
その日のうちにオヤジは夜逃げ同然にこの街を出たそうだ。
61 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 20:26:04 ID:JF2Vd8YE
俺はシャッターの下ろされた楽器屋の前にいた。
ハルヨシの伝言通り、店の郵便受けには一枚のCDが入っていた。
ストーンズのスティッキーフィンガーズ。
俺はあの日、このCDをオヤジに借りる約束だったんだ。
CDケースの中には数枚のピック、それとメモ用紙が一枚挟まれていた。
そこには
「すまん」
…と。
理由はなかった…
言い訳もなかった…
ただ一言だけ、
「すまん」
と書かれていたよ。
64 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 21:00:02 ID:JF2Vd8YE
人が人生の中でその両手に留めておける物っていうのは、実はそんなに多くない。
なにかを失えば、なにかを得られる。
そして得てはまた、指の隙間からこぼれ落ちるように失う物がある。
運命ってヤツがあるとして、神様ってヤツがいるとすれば、
実に上手く作られたもんだ俺達は。
オヤジは俺の前から姿を消し、ハルヨシが現れた。
俺とハルヨシがお互いの存在を得ることによって、
俺達はまた失うことになる。
ハルヨシは大切なものを…俺はストラトの音色を…
だがそれはまた別の話だ。
65 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/14(金) 21:07:04 ID:JF2Vd8YE
それからオヤジがどうなったかはわからない。
奥さんと子供がいることは以前聞いたことがあるが、
幸せにやってるだろうか。
今でも不意に現れては
「バカ野郎、ロックてのはなぁ…云々」
なんて言い出すんじゃないか?
俺はその日を待ってるぜ。
あの日聴かせるはずだった、あのファンキーなフレーズを胸に…
いつまでもな。
おっと…長くなっちまったな。
----この後、「感動した」「続きを聞かせて!」等のレスが続き、ふたたび13氏降臨----
84 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 16:53:38 ID:IlqGnrkB
よし、じゃぁその後の話をさせてもらおう。
少し…長くなるがな。
それにはまず、ハルヨシのことについて少し話さなければならないな。
オヤジが俺達の街から姿を消して以来、俺とハルヨシは急に仲良くなった。
オヤジの件が無ければ、おそらく一生接点の無かったであろう俺達だが
ギターを通じて無二の親友となるのにそれほど時間はかからなかったのさ。
ハルヨシは天才だった。
軽々しく使う言葉じゃないのはわかってるが、それ以外にヤツのギターを
表現する言葉が見つからなかった。
その当時、はっきり言って俺は初心者のレベルを脱していない程度だったが、
ハルヨシは違った。
俺達が出会った中2の時点で既にプロの域に達していたよ。大袈裟じゃなくな。
あれから十数年の時が流れたが、俺は未だにあの頃のハルヨシのギターを
越えたと思えない。
アイツはきっとロックの神様に愛されてたんだ。
ハルヨシはきっと将来世界を舞台に活躍するギタリストになる…
そう信じて疑わなかった。
俺のギターの何が気に入ったのかわからないが、
「一緒に演ろうぜ」
ハルヨシはそう言ってくれたのさ。
そして2年の歳月が流れた。
俺達は高1になっていた。忘れもしない高1の冬だった。
85 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 17:18:39 ID:IlqGnrkB
高校に上がると同時に音楽仲間もできた。
俺とハルヨシは別々の高校になっちまったけど、それでも毎日のように顔を合わせてたな。
そのうちに俺の高校からドラマー、ハルヨシの高校からボーカルとベーシストが見つかり
それが最初から決められていたことであるかのように、
俺達は五人で一つのグルーヴを紡ぎだすことになる。
ベーシストの家に倉庫っていうか…ガレージがあってな。
そこが俺達の溜まり場になった。もちろん練習もその場所だ。
タバコの煙で、まるで霧がかかったようなガレージの中…
夜中まで止むことの無いR&Rとバカ話。
最高だったぜ…あの頃の俺達は。
ハルヨシという最高のギタリストが身近にいたこともあって、
俺達メンバー全員の上達も早かったぜ。自分で言うのもなんだがな。
気付けば俺達は地元じゃかなり有名なバンドにまでなっていた。
月に二回程のライブにも大勢のファンが足を運ぶようになっていた。
…全てハルヨシの力だったよ。
それは12月に入ってすぐの頃…俺の16回目の誕生日のすぐ後のことだった。
87 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 17:41:30 ID:IlqGnrkB
その頃の俺にはバンド仲間とは別に、悪い仲間が出来始めた。
多感な16歳の少年が道を踏み外すお決まりのパターンでも想像してくれ。
全てに反抗してみせることがロックなんだと思い込んでいた。俺も若かったんだ。
気付けばケンカとバイクに明け暮れる日々…バンドの練習の頻度は徐々に少なくなっていた。
ハルヨシはそんな俺を見るたびに
「ギタリストなんだから手は大事にしろよ」
と繰り返していた。
正直に言おう。あの頃の俺はハルヨシに対して激しい嫉妬心を抱いていた。
自分が少し上達するたびに、ハルヨシと俺との差がはっきりと理解できる。
そんなバンドに嫌気がしていたのも確かだった。
その日は久しぶりのバンド練習を終え、各自家に帰ろうとしていた。
日付はもう変わろうとしている。
俺はその日、誕生日プレゼントにと族の仲間から格安で買い取った
ボロボロのXJ-Rに乗っていた。もちろん免許はない。
バイクを手に入れてゴキゲンだったんだな。珍しく上機嫌でバンド練習に参加したよ。
俺はバイクが嬉しくて…嫌がるハルヨシを強引にタンデムに乗せて帰ることにした。
ハルヨシはサブギターをガレージに置きっ放しにしてたから、
ハルヨシの背中には俺のストラト、俺の背中にはハルヨシ…
ボロボロのXJ−Rは夜の街に走りだした。
88 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 17:57:35 ID:IlqGnrkB
遠くから救急車のサイレンの音が聞こえる…
俺はアスファルトの上に大の字に寝転がって、星空を見上げていた。
何が起こった?わけがわからない…
確か今日は練習を終えて、そのあとバイクで帰って…
その前後の記憶がひどくぼんやりしている。
いつもの国道を絶好調にブッ飛ばして…
ファミレスの角を曲がって…
そして目の前に迫るトラックのヘッドライトを思い出した瞬間
俺は全てを理解した。
やっちまった…
無免で事故ってのはどうなるんだろ?
金とかかかんのかな?
最初はそんなことが頭をよぎった。
…ハルヨシは!?
思い出した俺は体を起こそうとしたが、脇腹と左足に激痛が走った。
激痛に身をよじらせながら、何とか体の向きを変え辺りを見回してハルヨシを探した。
体中に走る激痛、ぼんやりとした頭…
どこか現実離れした感覚の中、俺が目にしたものは………
5メートルほど離れたところのガードレールにもたれかかっている、
ハルヨシの姿だった。
89 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 18:12:51 ID:IlqGnrkB
怪我の程度は俺の方が重症だった。
アバラ3本と左足の骨折だ。打撲と裂傷は体中にあった。
ハルヨシの体にはほとんど怪我という怪我はなかったんだ、ただ…一箇所を除いて。
左手の粉砕骨折。それがハルヨシがあの事故で負った唯一の怪我だった。
よりによって左手。ロックの神様に愛されていたはずのヤツの手。
これから世界中を感動させるはずだったヤツの手。
俺が奪ってしまった。
「ギタリストなんだから手は大事に」
ハルヨシは普段から俺にこう繰り返していた。
なんて皮肉だ…
ケンカで人を殴りつけてきた俺の手は、
悲しいぐらいに無傷だった…。
90 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 18:43:40 ID:IlqGnrkB
俺が退院したのは年が明けて一週間も経った頃だった。
家族は俺の事故の後始末で正月どころじゃなかったらしい。
あれからメンバーが何度か見舞いに来た。事故の様子もその時に詳しく聞いた。
バイクは大破、死ななかったのが不思議なぐらいの事故だったと。
ドラマーが最初に見舞いに来たとき、俺のストラトを持ってきた。
救急車が事故現場に着いたとき、ハルヨシは俺のストラトを抱えたままだったそうだ。
ボディーに若干の凹みがあったが、俺のストラトは殆ど無傷といっても良い状態だったよ。
ハルヨシは…結局ハルヨシが俺の病室に姿を現すことは無かった。
他のメンバーからハルヨシの怪我のことも聞いた。
切断は免れたが、もう元のように動くことはないだろう…と。
結局バンドの核であるハルヨシがいなくなることで俺達のバンドは解散へと向かっていった。
事故から約一ヶ月…あれから俺はギターを弾けないままでいた。
92 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 18:56:27 ID:IlqGnrkB
天才の…親友の手を奪ってしまった俺が、どのツラさげてギターを続けられるっていうんだ?
俺は…ロックとの決別を意識し始めていた。ストラトもあの時のままだ。
忘れられない運命の日は突然やってきた。
日付までしっかり覚えているぜ。
1月17日。
俺を再びロックの道へ引き戻してくれたのは、
ハルヨシとこの後に出会うナツの存在だった。
しかしそれは同時にハルヨシとの別れの時でもあった。
…これはまた、別の機会に語るとしよう。
------------------------------------------------
96 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 20:41:51 ID:Ow4OLRDk
あの頃のことをひとつ思い出す度に、ひとつ…またひとつ、
とめどなく思い出される数々の記憶。止まらなくなっちまったよ。
最後まで聞いてもらうとしようか…
あの運命の1月17日から始まった俺とハルヨシと…
ナツの物語を。
97 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 20:57:28 ID:Ow4OLRDk
あの事故以来、眠れない夜が続いたよ。
退院して自宅に戻ってからも同じだった。
その日も俺は眠れずにいた。時計を見ると朝の5時を過ぎていた。
「また眠れなかったな」
そう思ったときに部屋のすみに置いてあったストラトがふと気になった。
あれ以来ギターケースにしまったままだ。
俺が暫くストラトに見入っていると…カタカタカタ…なにかが小刻みに揺れる音。
続いてベッドに横になった俺の体が衝撃と共に浮き上がるような感覚。
地震!?
俺はやめたはずのギターを…ハルヨシが守ってくれたストラトを抱え
松葉杖もつかずに転がるように部屋を飛び出した。
98 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 21:20:01 ID:Ow4OLRDk
家の中は目茶苦茶だった。窓から見えていた景色も全く違っていた。
幸いにも俺の家族は全員無事だった。家も全壊は免れた。
近所のあちこちで火の手が上がりはじめた。俺達は取る物もとりあえず、避難所へ直行したね。
俺はストラトだけを抱えてな…
小学校の体育館には続々と人が集まってきた。その中にハルヨシの姿もあった。
ハルヨシは俺に気付くとこっちに近寄り、なにか言おうとしたが
俺は気付かないふりをして人込みに紛れてしまった。
合わせる顔が無かったんだよ。ヤツからギターを奪っちまった俺に何を言えって言うんだ?
99 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 21:34:19 ID:Ow4OLRDk
ハルヨシの家族は無事だったが家のほうは全壊だったらしく
ハルヨシはその後暫く避難所生活を余儀なくされる。
俺は家に戻り、またハルヨシとは顔を合わせることの無い日々が続いた。
俺達が別れるその日まで。
そんな時出会った女が
ナツだった。
左足のギブスを外しに行った病院から…俺達の出会いは始まった。
101 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 22:02:43 ID:Ow4OLRDk
病院の待合室は混み合っていた。待たされるのは承知の上だ。
俺はソファに座り、待合室のテレビをぼんやりと眺めていた。
その時、看護婦に連れてこられて俺の隣に座った女がいた。
座るなり鞄の中からヘッドフォンを取出し、大音量で聴き始めた。
ヘッドフォン越しに聞こえるジャカジャカという音。
…どこかで聴いたことのある音。俺は耳をすます。
それは俺達のバンドのデモテープだった。
普通なら嬉しいはずなんだが、その時の俺には拷問に近いものだ。
曲がちょうどハルヨシのギターソロに差し掛かった時、俺は堪らず話し掛けた
「ボリューム下げてくれ」
102 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 22:13:19 ID:Ow4OLRDk
当然聞こえる筈がなく、女は目を閉じたまま聴き入っていた。
俺が女の肩をトントンと軽く叩と、女はビクッとし慌ててヘッドフォンを外した。
「あの…ボリュームを…」
女の様子に面食らった俺が恐る恐る言うと、
「ごめんなさい、大きかったですか?」
慌てて頭をさげる。
??
女はさっきからずっと目を閉じたままだった。
103 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 22:33:44 ID:Ow4OLRDk
俺達が出会ったとき、既にナツは光を失っていた。
あの日、落ちてきた梁の下敷きになったが奇跡的に救出されたのだ。
父親は即死だったという。
元々父親と二人暮しだったナツは、地震により視力とたった一人の家族を奪われちまったんだ。
ギブスが取れてからも俺は彼女の病室に足を運んだ。
光を失い、一人ぼっちになっても明るさを失わないナツに
あの事故以来腐っちまってた俺は惹かれ始めていた。
ナツは俺達のバンドのファンだった。
俺がそのバンドのギタリストだということを打ち明けると
ナツは飛び上がって喜んだよ。
104 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 22:50:03 ID:Ow4OLRDk
恋心なんて呼べるもんじゃなかった。
俺は自分の苦しみを少しだけでも癒してくれる存在をナツに求めていた。
ナツもまた一人になった寂しさを埋められる存在を俺に求めていたのかも知れない。
早い話、傷の舐めあいさ。
それはジョンとヨーコのような関係じゃなく、
例えるならシドとナンシーのような…
不安定で壊れやすい、そんな関係だった。
とにかく俺はナツに全てを話した。
オヤジのこと。ハルヨシのこと。バンドのこと。そして、事故のことも。
106 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/16(日) 23:06:13 ID:Ow4OLRDk
自分より遥かに不幸な境遇の彼女に全てを打ち明けることで精神のバランスを保とうとしたんだ。
とんだ大バカ野郎だろ?
疲れてたんだ。他のメンバーが
「お前の手が潰れりゃよかったんだ」
なんて思ってるんじゃないか?そう考えてしまう程に。
ナツは俺の話を聞いても、特になにかを言うわけじゃなかったけど
聞いてくれるだけで随分楽になったもんだ。
病室に行く度に、ナツは俺にギターを弾くことをせがんだが
俺は断り続けた。
俺はまだ…ギターを弾けないままでいた。
そして、俺にはハルヨシとの別れが待っていたんだ。
-----------------------------------------------------------
126 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 16:32:36 ID:sKIRqojV
ハルヨシのお袋さんはあまり身体の丈夫な人じゃなくてな。
結局避難所生活に耐えかね、遠い親戚を頼って家族全員で
静岡に引っ越すことになったんだ。
そんなことを知らない俺は、ハルヨシに会おうともせず
相変わらずナツの病室に通い、自分の苦しさを誤魔化していた。
もう、全てを忘れてしまいたかった。
ハルヨシのこともギターのことも。
俺がメンバー…いや、元メンバーに聞き、そのことを知ったのは
ハルヨシがこの街を出るその日のことだった。
会って何を言おうとしたのかわからない。
だが俺の足は避難所へと向かっていた。
俺が避難所へと着いた時、既に荷物はトラックに積み終わっていた。
トラックに乗り込もうとするハルヨシを見つけた俺は叫んでいた。
「ハルヨシ!」
128 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 16:43:27 ID:sKIRqojV
ハルヨシは俺に気付いた。こっちを見ている。
何か言わなくちゃ…何を言えばいいんだ?
言葉が出ない…
俺達の距離は数メートル離れていた。
ハルヨシも…何も言わない。いや、言えないんだろうか…
無言のままお互いをじっと見据えている俺達二人。
どのぐらいの時間が流れたのかわからない。
ほんの数秒だったような気もするし、数分経っていたような気もする。
そのうちにトラックの運ちゃんがしびれを切らしたのか、
クラクションを軽く2回鳴らした。
ハルヨシはハッとし、トラックに乗り込もうとする。
ハルヨシが行っちまう…
頭の中で言葉がグルグルと回り始める…その時だった。
トラックに乗り込もうとしたハルヨシがもう一度俺を見た。
別れの挨拶だったんだろうか…軽く手を挙げたあとに…
……笑ったんだ。
130 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 16:53:40 ID:sKIRqojV
何故…?何故笑える?
いっそツバでも吐き捨てて、罵声の一つも浴びせてくれりゃよかったんだ。
ハルヨシがそんな顔で笑ったら俺は自分をどうすりゃいいんだ?
愚かだった俺が、別れ際のハルヨシの笑顔の意味に気付くのは、
ずっと後のことだ。
ハルヨシがいなくなり、ギターも弾かなくなった俺に残されたもの…
俺にはもうナツの存在が全てだった。
132 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 17:09:28 ID:sKIRqojV
季節は夏になっていた。
相変わらず毎日のように俺はナツに会いに病院に行く。
一日に1時間かそこらだが、
ナツに会っている間、ナツと話している間、俺は全てを忘れていられた。
不思議にも話すことは尽きなかったな。
とりとめのない話。小さかった頃の話。学校生活の話。
初恋の話。家族の話。生まれた街の話。そして夢の話。
ナツの夢は絵描きだった。
それを聞いた俺は最初、目が見えなくなってしまったナツに同情したもんだ。
だが彼女は…
「見えなくても手が動けば絵は描けるよ」
と言い、更に
「手がダメになったら口もあるしね」
と付け加え、明るく笑うのだった。
どうしてそんなに強くいられるのか?
左手を失い、最後に笑ったハルヨシも…
光を失っても絵を描くことを諦めないナツも…
なぜ笑えるんだろう?
あの頃の俺には理解できなかったよ。
136 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 17:39:37 ID:sKIRqojV
ある日、ナツが二人で出掛けたいと言い出した。
目の見えないナツは一人じゃ外に出ることも出来ない。
だから俺を付き添いに、外の空気を吸いたい…とな。
別に構わないけど、と俺が言うとナツは喜んで
担当の看護婦に外出の旨を伝えに行く。
別に外泊するわけでもないし、用意もそこそこに
俺達は病院を後にした。
病院を出る時、看護婦に
「危ないから絶対に走ったりしないように」と強く念押しされた。
そうだよな…目が見えないんだし、走ったりして転んだら大変だ。
俺達は電車で1時間ほどのところにある、
ナツの生まれた街に来ていた。
ここのお好み焼きが美味しいんだよ、とか。
画材を買うのはここの文具屋さん、とか。
目が見えないとは思えないほどに、ナツのナビは完璧だった。
鮮明に残る記憶を頼りに、ナツは自分の生まれた街を俺に案内する。
その日俺達は初めて手を繋いで歩いた。
初めて触れるナツの手。
力を込めると潰れてしまいそうな程華奢なナツの手は
とても暖かで、柔らかだった。
137 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 17:56:33 ID:sKIRqojV
日が暮れかけて来た頃、もうそろそろ帰ろうかと言い出した俺に
ナツは「お願いがある」と言い出した。
今日の外出の本当の目的はその「お願い」にあったらしい。
ナツの思い出の場所…小学生の頃の、両親との思い出の場所。
夏が訪れると必ず行った向日葵畑がこの近くにある。
自分はもうその向日葵を見ることは出来ないが、
俺にそれを見て欲しい、と。
最後に行ったのはもう6年も前の話で、
父親にもその向日葵畑を見せてあげたいから…
俺が見た向日葵畑の風景を元に絵を描こうというのだ。
出来上がった絵は父親の仏前に供えるから
しっかり覚えて帰ってね、とナツは笑った。
138 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 18:13:47 ID:sKIRqojV
その場所に辿り着いた俺はナツに訊いた、
「この場所で…間違いない?」と。
ナツの案内どおりに小さな酒屋の角を曲がった先に
その場所はあった。酒屋の名前も一致している。
ただ一つだけ違っていたもの。
俺の目に映ったものは…アスファルトで綺麗に舗装された
駐車場だった。
風景を覚える自信なんてなかったから、来る途中で
インスタントカメラも買った。
ナツは「どう?」と俺に訊いた。綺麗でしょう?とでも言いたげに。
「うん、すげぇな…こんなにたくさん向日葵見たのは初めてだ」
俺の口から咄嗟に出た言葉…最初で最後の嘘だったよ。
俺の言葉から何かを感じ取ったのか、
ナツの手が一瞬こわばるのがわかった。
でもナツはいつもの笑顔を俺に向け
「ありがとう」
と言った。
その言葉がこの場所まで連れて来たことに対するものなのか、
それとも俺の嘘に対するものだったのか…今となってはわからない。
ナツが死んだのはそれから3日後のことだった。
141 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 19:23:17 ID:sKIRqojV
帰りの電車の中、久しぶりに外に出たナツは疲れちまったのかずっと眠っていた。
病院に着いた後、別れ際に眠そうな目を擦りながらナツは俺にこう言った。
「ギター、やめないよね?」
不意をつかれた俺は思わず「うん」と返事をした。
それが俺とナツの交わした最後の約束になっちまった。
「今度聴かせてね」そういってナツは俺に手を振っていた。
家に着いた俺は、あの事故以来初めてストラトを手に取った。
その時の俺は親友の左手を奪っちまった重荷のことは忘れていた。
ナツに俺のギターを聴いてもらいたい…それが俺が考えることの全てだった。
ところがアンプに挿したストラトはウンともスンとも言わなかった。
あの事故でどっかイカレちまったのか?
一晩かかって直そうとしたけど…結局ストラトが直ることはなかった。
145 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 21:36:43 ID:Xve/YB65
次の日病室にナツの姿はなかった。
顔見知りになっていた看護婦がナツに会わせてくれた。
ストレッチャーに乗せられたナツは別室にいた。
怪我は目だけだと思っていた。何故いつまで経っても退院できないのか、
疑問に感じなかったあの頃の俺が今思えば不思議でならない。
ナツの体にはあの地震の日以来、小さな瓦礫の破片が無数に埋まったままになっていた。
心臓とその近くの血管にくい込んだ破片は外科的処置ではどうにもならなかった。
146 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 21:51:48 ID:Xve/YB65
十年後だったかもしれない、一年後だったかもしれない、あるいは
ナツの寿命が尽きる時まで来なかったかも知れないその時は、
その日突然やってきた。
ナツはストレッチャーに乗せられたまま手術室へと運ばれていった。
俺は呆然としたままで、どうやって帰ったのかは覚えていない。
これは現実なんだろうか…虚ろな感覚…沸かない実感…
ナツが死ぬ?嘘だろ?
147 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 22:04:18 ID:Xve/YB65
次の日はICUのナツをガラス越しに見ただけだった。
無数のチューブが繋がれたナツを、それ以上見ていられなくて俺は病院をあとにした。
家に帰り着いた俺を待っていたのは
…ハルヨシから届いた荷物だった。
149 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 22:37:45 ID:Xve/YB65
送られてきた荷物はハルヨシのメインギター、ギブソンのレスポールクラシック。
あの事故がなければハルヨシと共に世界で活躍することになっただろう…
そのギターだった。
ハードケースに納められたそのギター以外には何もなかった。
手紙やメモの類もだ。
俺に…弾けっていうのか?
このギターを…ハルヨシのギターを…
お前からギターを奪っちまった俺に…?
…出来るわけねえ。
でもなハルヨシ…明日一日、一日だけ使わせてもらうぜ。
ナツにガラス越しでもいい…俺のギターを聴かせる為に。
その後は…お前からギターを奪った俺はもうギターは弾かねぇよ。
152 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 23:18:38 ID:Xve/YB65
俺はオヤジから買ったアンプとハルヨシのギターをその手に持って病院へ向かった。
ICUのガラス越しにギターを弾く許可を貰おうと思って
あの顔見知りの看護婦を探した。
ICUの前で見つけた看護婦は泣いていた。
それだけで全てが理解できた。
繋がれていたチューブは全て取り去られ、ナツは眠っているようにそこに横たわっていたよ。
俺はナツにギターを聴かせることが
とうとう出来なかった。
最後に触れたナツの手に、あの時感じた温かさは無く
冷たさだけが俺の手の平に伝わって来た。
153 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 23:33:33 ID:Xve/YB65
日が暮れるまで、俺はナツと過ごしたあの病室にいた。
不思議だが、実感がないと涙って出ないもんなんだな。
胸にポッカリと穴があいたような…って言うのはこういう感じを言うんだな…
こんな風に自分でも驚く程冷静に、この大きな喪失感を分析していた。
看護婦にでも頼んで買ってきてもらったんだろうか、
夕日に照らされた新品のキャンバスが、主を失ったベッドの隣にひっそりと佇んでいた。
向日葵が描きこまれることはなく。
157 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/17(月) 23:55:25 ID:Xve/YB65
その夜、俺はあのガレージにいた。
俺の、俺達の青春とも呼べるあのガレージに自然と足が向かっていた。
突然訪れた俺に驚いたベーシストだが、俺の様子と俺が持っていたハルヨシのギターに気付くと、
何かを察したのか、
「使えよ」
そう言ってガレージの鍵を開けてくれた。
鍵を開けた後は何も言わずに俺を一人にしてくれた。
あの時のことは感謝している。
一人になって暫くすると、色んな事が頭の中を駆け巡った。
ロックを教えてくれたオヤジ、
ギターを奪っちまったハルヨシ、
死んでしまったナツ。
159 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/18(火) 00:09:19 ID:j+vJqmSs
おもむろにハルヨシのギターをアンプに繋ぐ。
そしてジャランとギターを鳴らした瞬間…
一気に来た。込み上げて来た。
俺は声を上げて泣いていた。
叫び声に近い声で泣いていた。
ギターを掻き鳴らしながら泣いていた。
殴ったこの手で。
奪ったこの手で。
握ったこの手で。
ギターを弾きながら泣いていたよ。
161 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/18(火) 00:18:42 ID:j+vJqmSs
もう少しで話も終わるとこだが、今日の所はこの辺りで寝るとしよう。
気になってるヤツもいるようだから、一言付け加えておくが、
数年後に俺とハルヨシは再会することになる、
ロックンロールのグルーヴの中で。
--------そして、翌日。
205 :13◇/koT5II8pU:2005/10/19(水) 19:49:50 ID:4wws0pTS
俺はその日ハルヨシギターを抱きながらガレージで寝ていたよ。
3日後街フラフラ歩いていると見覚えのある顔があった…。
その人は俺にロックの魂を教えてくれた親父だった。「親父!!」俺は思わず声をかけた。
親父はその声に気付き走るように去っていったんだ…
なんでだよ…なんでみんな俺の下から去っていくんだ?
親父もハルヨシも…そしてナツも…
俺はナツという生きる支えを失って、まさしく廃人になっていた。
ハルヨシのギターもあの時以来ケースから出してさえいない。
そんな俺に新たな出会いがあった。そうそれは今日のように肌寒い夜の事だった。
214 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 21:49:06 ID:mUiQQdXn
泣き尽くしてしまったのか、俺はハルヨシのギターをスタンドに立てて
ちょうど向かい合うようにアンプにもたれて座っていた。
ガレージの中は静かだった。
さっきまでのギターの爆音が、この静けさを一層際立たせていた。
ナツが死んだのが運命なのだとしたら、俺達は何故出会ったんだろう。
俺じゃなくてもよかった筈だ。
ナツに何もしてやれなかった俺じゃなく。
出会ったのが俺じゃなければ、ハルヨシはギターを失わずに済んだ筈だ。
運命は、神様は俺に何を望んでいるっていうんだ。
215 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 22:08:40 ID:mUiQQdXn
ナツを失ったこの苦しみが親友の夢を奪った俺の贖罪なのか…?
いくら考えても答えは出なかった。
ガレージの窓の向こうはうっすらと明るくなっている。
俺の記憶に残るナツの顔は常に笑顔だった。
明日死ぬかもしれない。
身体の中の小さな破片がいつ自分の命を止めるかわからない。
どれ程の不安と恐怖がナツを襲っただろう。
それでもナツは、もう二度と光を感じることの無いその目で
夢を…未来を見ていたよ。
ナツの最後の言葉が頭の中に響いてくる。
何度も、何度も。
「ギターやめないよね」
「今度聞かせてね」
216 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 22:22:19 ID:mUiQQdXn
明日死ぬかもしれない…それは本当は当たり前のことなんだよ。
その現実が俺達は極端に薄っぺらく、ナツには分厚かった。
それでもナツは前を見た。
俺は…?
俺は何をやっている?
俺は今、生きてるじゃねえか!こんなにも!
ハルヨシのギターが囁いたような気がした。
「お前が弾いてくれよ」
俺はギターを弾いてもいいのか?
ハルヨシ、お前は俺を許してくれるのか?
217 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 22:31:59 ID:mUiQQdXn
ハルヨシの気持ち。
ナツの気持ち。
俺はギターを弾かなきゃいけない。
なによりも俺の気持ち。
俺はギターを…弾きたい!
その瞬間、俺の瞼の裏に
うなずきながら笑うナツがいた。
向日葵のようなあの笑顔で。
俺が一つの答えに辿り着いた時、
長かった夜は終わりを告げていた。
ガレージの小さな窓からは、昇ったばかりの朝日が
まるでスポットライトのように
ハルヨシのギターを照らしていた。
218 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 22:49:04 ID:mUiQQdXn
あれ以来、俺の街ではよく向日葵を見掛けるようになった。
見る度に
「忘れちゃやだよ」
そう言って悪戯っぽく笑う。
あの笑顔でな。
時は経ち、それは今年の春のことだった。
ロックンロールの神様が意地悪に組み立てた歯車達が
静かにゆっくりと
回り始める。
221 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 23:08:50 ID:mUiQQdXn
俺は生まれた街を離れ、神奈川のとある街にいた。
あれから…ナツが死んでから俺はこの手で人を殴ったことはない。
わかったんだ。俺のこの手は殴る為にあるんじゃないからな。
ギターを弾く為さ。
何かを得ては失ってきたけど、もうこぼさない。
絶対にこぼしちゃいけないものが、今俺の手の中にある。
大事な女が。
女の左手には、指輪が光っている。
ギターを弾く、俺の左手にもな。
222 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 23:20:22 ID:mUiQQdXn
東京の小さなライブハウスに行った時のことだ。
すげえヴォーカルがいた。
決して綺麗な、聴きやすい声じゃないんだが…鳥肌が立ったのを覚えている。
ステージの上のその姿は、紛れも無いハルヨシの姿だった。
225 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 23:32:58 ID:mUiQQdXn
ステージで歌うハルヨシの手にはギターが握られていた。
あの頃の手の動きじゃないけど、
最高にカッコよくパワーコードを掻き鳴らしていたよ。
動かないと言われたあの手が。
思わぬ再会を果たした俺達。
この冬、俺達のバンドが動き始める。
今は便利になったもんだ、ネットを通じてハルヨシとやりとりし、曲も順調に出来てきている。
来月ハルヨシは俺の近所に引っ越してくる。俺とバンドをやる為に、
仕事も辞めちまったんだと。
227 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/19(水) 23:57:42 ID:mUiQQdXn
ギターを弾けなくなってもハルヨシはロックを諦めなかった。
歌うことで。
「手が動かなくてもロックはできるぜ」
そう言って笑うハルヨシに、俺はあの時見たナツの笑顔を重ねていた。
あの事故から十年経った今じゃ、パワーコードと簡単なオブリぐらいなら
弾けるようになっちまった。
動かないと言われたヤツの手が、ここまで来るのに
一体どれ程の苦労があっただろうか。
やっぱりアイツはロックの神様に愛されていたんだな。
231 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/20(木) 00:09:43 ID:BCLB9urM
そして先月、俺は父親になった。
まだ産まれちゃいないけどな。
産まれるのは夏頃になりそうだ。
ちょうど向日葵の綺麗な頃だと思う。
俺はオカルトチックなことはあんまり信じない質なんだが、
ロックの神様がいるのなら……
産まれてくるのはきっと、
女の子だ。
向日葵のような笑顔の
女の子に違いない。
名前は……
決まってるよな?
233 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/20(木) 00:23:44 ID:BCLB9urM
長かったが、これが俺とハルヨシと
そしてナツの物語だ。
この物語はまだエンディングを迎えていないんだよな。
エンディングは…これからの俺達次第さ。
さっきも書いたがもうすぐ俺達のバンドが動き始める。
いつか…左手に傷のあるヴォーカルと
アンプの側にストラトを置いて、ピックガードのないレスポールを使うギタリストを見掛けたら…
ロックンロール!と叫んでくれ。
俺達は頑張るよ。
いつか日本のどこかにいるオヤジに
俺達の曲が聞こえるように。
そして、俺のギターが
天国のナツに届く
その日まで。
234 :13 ◆/koT5II8pU :2005/10/20(木) 00:26:32 ID:BCLB9urM
最後におまえらに問うぜ。
その手は
なんの為にある?
ロックでいろよ!
----------------------
(うw;`)
改めて読み返して泣きそうになった・・・
えぇ話や・・・・
本スレには、上に乗せたの以外にも。13氏のレスとかがまだ乗ってるので
是非一度目を通してみることをオススメします(;;
